デジタルで建設をDXする・90/樋口一希/アーティストリーがCNC LABを開設

創る(=設計)から、造る(=製造)へと直結するデジタル・ファブリケーションが活況を呈している。アーティストリー(愛知県春日井市、※1)は2022年11月に工場内に「CNC LAB」(※2)を開設。木工先進国のドイツやイタリアの最新工作機械「5軸CNC」などのデジタル機械を導入し、家具、サウナ、建築、アートなど多様な分野への援用を開始した。
□クリエイティブ(創造)、トレーニング(訓練)、イノベーション(技術革新)のLAB機能□
脱炭素社会の実現に向けて国産材の利用や木造・木質空間の必要性が注目される中で、アーティストリーはCNC LABにおいて、三つの領域でノウハウを全面公開し、業界全体の活性化を図る。
クリエイティブ(創造)LABでは、建築家、デザイナーなどを招待し、リアルに頭と体を動かしながら新たなアイデアを創造する場を提供する。その際には、作り手と近接することで効率の良いセッションを誘発させ、実現可能性を探る。LABの2階にはミーティングルームを完備し、アイデアをすぐに試作できる環境も整備している。
トレーニング(訓練)LABでは、同業他社に対してもアーティストリーが培ってきた経験値(技術・開発・教育制度)を公開し、トレーニングを受け入れる場を提供する。
イノベーション(技術革新)LABでは、16年から活用しているHOMAG社に加えて、中規模建材サイズまで加工できるBIESSE社の5軸CNCを導入、新たなニーズに応える環境を提供する。
□建築では隈研吾氏設計の英国アンティーク博物館「BAM鎌倉」の正面ファサードに援用□
近年、アーティストリーの挑戦心・技術力・対応力をベースにして、内装家具の領域にとらわれず、サウナや建築などさまざまな業界との協働が増えている。デジタル技術と職人技の融合によって生み出された3D木工の実例を紹介する。
サウナでは21年に、ブームをけん引するサウナプロデューサーであるTTNEなどの依頼を受け、北海道・知床にある「北こぶし知床ホテル&リゾート」のサウナ室の改装を行った。我が国初のデジタル技術を駆使した3Dサウナとして、SAUNACHELIN(サウナシュラン、※3)では2年連続で上位受賞(21年2位、22年4位)し、業界内外で大きな話題となっている。
建築では、建築家・隈研吾氏の設計案件で協働している。22年9月に神奈川県鎌倉市にオープンした英国アンティーク博物館「BAM鎌倉」の正面ファサードの製作を担当した。伝統工芸の鎌倉彫から着想を得て、隈氏がデザインした国産ヒノキ材を使ったファサードを実現している。デジタル技術と繊細な家具職人の技術を融合させ、ゼネコンの施工ノウハウとも相まって完成させている。
(※1)アーティストリー=商業施設から有名ハイブランド、個人住宅まで、さまざまな生活空間のオーダー家具什器(じゅうき)を製作する。木材を3D加工できる5軸CNCや3DCADといった最新デジタル技術と永年にわたり培ってきた職人技術とを融合させて、唯一無二の作り手を目指し、挑戦を続けている。
(※2)CNC=Computer Numerical Controlの略。コンピューター数値制御と訳す。コンピューター数値制御(プログラミング)によって自動制御で加工を行う工作機械のこと。木工業界では、平面加工ができる3軸制御が主流であったが、我が国の木工製造現場でも3D立体加工ができる5軸制御モデルの導入が進んでいる。
(※3)SAUNACHELIN(サウナシュラン)=プロサウナーが審査委員となり、全国9600施設以上ともいわれるサウナ施設の中から水風呂、外気浴スペース、ホスピタリティ、男女の有無、料金設定、清潔性、エンターテインメント性、革新性などの観点で評価する。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

(km5002h_admin様より引用)