凜/ぶなのスタジオ一級建築士事務所・大西智子さん/伝統工法を残したい

 設計事務所を開業して10年ほどになる。主に一戸建て住宅の改修計画や設計を手掛け、改修に関わる中で伝統的な木造工法の魅力に引かれていったという。
 「改修工事の設計監理で毎日のように現場へ足を運ぶ。木造住宅の改修は経験が重要で工務店もベテランの大工を配置している。彼らが金具を用いない『貫(ぬき)工法』の魅力を熱く語ってくれた」と語る。柱の途中に穴を開け、貫と呼ばれる構造材を横に通す工法は地震にも強い。
 仲間たちと一緒に貫工法の研究会を立ち上げ、技術を守るための活動を展開している。技術伝承のテキストが作成できないかと考えている。土壁のある家など伝統家屋、古民家の活用にも関心がある。開業した事務所の名前を「ぶなのスタジオ」にしたのも木への関心からという。
 建築設計の仕事に就くまで多くの仕事を経験した。短大で美術史を学び、卒業後は信託銀行で5年ほど勤務した。「ずっと仕事を続けたいという思いがあり、このままで良いのだろうか悩んでいた」。銀行を辞め「短大で美術史を専攻しもともと建築に興味があった」こともあり、専門学校に入って建築を体系的に学んだ。卒業後にプラント会社やアトリエ系設計事務所などで働き、経験を積んで自分の事務所を開いた。
 趣味は登山。渓流伝いに歩く「沢登り」が好きで、関西屈指の大渓谷として知られる紀伊半島の池郷川で沢登りも経験した。
 (おおにし・のりこ)

(日刊建設工業新聞様より引用)