始動外環道都内区間始動・下/ビジネスに防災に、広がる期待/日本の技術磨く場にも

 「東京外かく環状道路(外環道)の関越自動車道から東名高速道路までの区間は、関越道、中央道、東名高速という国土の大動脈を地下高速道路で直結する強力なネットワークとなる」。石井啓一国土交通相は、19日に開かれた外環道都内区間のシールドマシン発進式でそう力を込めた。



 完成すると、東名高速~関越道間の所要時間は現在の約60分から約12分へと劇的に短縮される。都心部への通過交通の流入が減少するとみられ、首都圏全体の交通の円滑化につながるとの期待は大きい。首都圏ネットワークの速達性・代替性の向上は、新鮮な食料品の流通拡大など民間企業のビジネスチャンスを広げることにも役立ちそうだ。さらには、首都直下地震など大規模災害時の救援・救急活動ルートとしての活用などその効果は多面的だ。



 東京都の小池百合子知事は、「国際競争を勝ち抜くには、経済の血液というべき人と物のスムーズな流れを確保することが極めて重要。外環道事業は、その中心となる取り組みだ」と高い期待を寄せる。



 同区間の整備は、国交省関東地方整備局と東日本、中日本の両高速道路会社が共同事業で進める。東名ジャンクション(JCT)から北行、南行の2本のトンネルをいずれも北に向かって掘り進む。施工は、東日本高速会社発注分を鹿島・前田建設・三井住友建設・鉄建建設・西武建設JV、中日本高速会社発注分を大林組・西松建設・戸田建設・佐藤工業・錢高組JVがそれぞれ担当。国内最大のシールドマシンで大深度地下空間を掘り進める初の試みにもなる。



 「一日一日の作業を確実に進めることを肝に銘じてやっていきたい」(鹿島JV)、「世界的にも規模が大きい。成功させるために技術を結集する」(大林JV)-。両JVとも本社を含めた総力体制で施工に当たる。資材や発生土が膨大な量になるため、円滑な現場運営にも細心の注意を払う方針だ。



 「このプロジェクトを通じて確立された技術が、インフラの海外展開の競争力にもつながっていくと期待している」(石井国交相)。国内の生産性向上だけでなく、世界を見据えた成長戦略も描いている。



 関越道とつながる大泉JCT側からの掘進も準備が進められており、立坑の構築に向けて既存施設の切り回しなどを実施中だ。当初の想定と地質が異なる可能性が出てきたため、シールドマシンの発進架台の構造を見直す作業も並行して進めている。



 このほか、JCTなどからの連結路(ランプ)を本線トンネルと合流させる地中拡幅部が整備される。大深度という高圧力条件の下で、非開削工法によりトンネルを地中で切り広げる難工事となる。関東整備局らは安全を最優先に早期開通を目指す。



 外環道は徐々に整備が進んできており、来年度には千葉県区間が全線開通する見通しだ。その効果を存分に発揮させるには全体の完成が不可欠。石井国交相は「湾岸部までつなぐ東名高速以南の計画の具体化も進める」と言及。小池知事も「皆さまと共に取り組む」と語った。道路ネットワークによる首都圏のさらなる進化への挑戦が続く。=4面に発進式



 (編集部・遠藤奨吾、牧野洋久)

(様より引用)