検証CCUS-持続可能なシステムに・4/煩雑な申請手続き、任意では限界も

 建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録が思うように伸びない理由の一つとして、申請手続きの煩雑さがある。技能者登録で必要となる登録項目は本人情報をはじめ135項目と膨大だ。中には社会保険の加入状況といった行政が管理している情報も少なくない。ある業界関係者は「コストをかけてまでいろいろな個人情報を集め、維持していくことが妥当なのか」と疑問を投げ掛ける。

 技能者が建設業振興基金(振興基金)に登録申請した書類に不備が見付かると、再度申請者側で修正する。それを振興基金が再審査する。このやりとりが登録の進まない足かせとなっている。「本来は2週間程度でカードが発行される。一度修正が見付かると倍以上かかる」(業界関係者)。技能者登録申請の不備発生率は一時、9割を超えていたという。

 元請会社は協力会組織を通じ、1次下請の登録を後押ししてきた。課題となっているのは2次下請以下だ。「1次下請が2次下請の登録を代行しているが、もう限界だろう」(元請会社の幹部)。

 今回の見直しで2021年度から技能者登録に2段階登録方式が導入される。ホワイトカードを持つ「簡略型」(94項目)とレベルアップを目指す「詳細型」(必須94項目、任意31項目)に分ける。料金は簡易型が2500円に据え置かれ、詳細型は4900円となる。「2段階方式は煩雑な手続きを解消する一つの回答」と業界関係者は見る。

 政府が運営する「マイナンバーカード・マイナポータル」とCCUSの連携も、登録手続きの省略化になると期待する声もある。マイナポータルにひも付けされている納税や社会保険加入など他のシステムとつながれば、審査が容易になるからだ。

 登録が進まない理由について、ある団体幹部は「加入するもしないも、事業者や技能者任せ。任意制度というのが問題ではないか」と指摘する。国土交通省は、CCUSが技能者の処遇改善や技能者を雇用する事業者に不可欠な制度インフラと説明してきた。その理念に業界は賛同する。ただ、「目に見えるメリットが感じられない。特に元請はコスト負担が増える」との声は、運用開始から1年半以上が経過した今でも多い。

 会員企業にCCUSの登録を呼び掛ける団体幹部は「わざわざ金を払ってやる意味があるのかと切り返され、いつも堂々巡り。義務化すると言ってもらった方が会員に説明しやすい」と率直な心境を明かす。

 業界はCCUSの運営に国費の投入を求めてきた。ある団体幹部は「軌道に乗るまでの間で構わない。その後は業界で引き受ける」と国交省の担当者に訴え続けてきたが、その度に「民間が資金を負担するという考えに変わりはない」と答えはいつも同じだ。

 CCUSを法律に規定すれば、国として予算を確保できる。システム改修などへの国費の活用も見えてくる。制度に詳しい関係者は「少なくとも技能者登録が3桁(100万人)に乗らないことには、国交省も義務化へかじを切れないだろう」という。

(様より引用)