竹中土木ら/切羽変状可視化システムを開発/トンネル現場の安全性向上

 竹中土木ら4者は、山岳トンネル工事を対象に切羽変状を可視化するシステムを開発し、実現場に試行導入した。切羽を自動計測して挙動を確認することで崩落・崩壊の兆候を捉え、切羽監視員らに警報を発信する。切羽監視員の作業を支援することで安全性の向上を図る。現地確認にかかる時間の削減、余掘り量の低減などの効果も期待できる。現場運用が可能な段階に入っており、さらなる精度の向上などを図り完成形に近付けていく。
 試行導入した「トンネル切羽変状可視化システム(フェース・コンディション・ビューワー)」は、竹中土木と演算工房(京都市上京区、林稔代表取締役)、計測技研(兵庫県尼崎市、橋村義人社長)、神戸大学で構成するコンソーシアムで開発している。国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択されており、内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)推進費が活用されている。
 同システムでは、3Dレーザースキャナーを用いて5センチ間隔で切羽を自動計測し、点群データを作成する。その後、4~5分間隔で切羽の挙動を面的に把握。各メッシュで当初の計測値と比較した危険度判定を実施する。切羽の押し出し量が管理レベルを超えた場合はレーザー照射で該当メッシュを明示。同時に作業員のへルメットを振動させて情報を伝達し、迅速な対策の実施や待避につなげる。
 切羽の現状を撮影している動画に、切羽挙動の解析結果を重ねてAR(拡張現実)として表示することが可能。切羽監視員がウエアラブル端末を装着して、現場の状況と切羽挙動解析結果の両方を把握するような使い方を想定している。クラウドサーバーにデータを送信するため、発注者も含めて遠隔地から確認することもできる。
 切羽監視員による確認作業の安全性向上や、トンネルの施工経験が豊富なベテランでなくても切羽監視が可能となる点が大きなメリットとみている。切羽の変位情報などを容易に確認できるため切羽の硬軟状況を踏まえた施工につながり、余掘り量の低減効果も期待できるとしている。
 国交省東北地方整備局発注の「東北中央自動車道上保原トンネル工事」(福島県伊達市)で検証を行っている。竹中土木の有彌四郎所長は「危険防止は経験によるものが多い。機械的にも監視できるものがあると良い」と話している。

(日刊建設工業新聞様より引用)