近畿整備局、大阪市、阪神電鉄/阪神なんば線淀川橋梁改築事業が起工

 近畿地方整備局と大阪市、阪神電気鉄道は9日、洪水や高潮等から大阪市中心部を守る「阪神なんば線淀川橋梁改築事業」の本格着工に先立ち、淀川右岸側の高水敷(西淀川区)で起工式を開いた。事業延長は約2・4キロ。淀川橋梁(橋長758メートル)を架け替えによりかさ上げし、同時に都市計画道路と鉄道の立体交差事業を行う。治水安全度の向上に加え、立体交差化による地域分断の解消などが期待されている。工期は2032年6月。総事業費は約563億円を見込む。
 淀川下流部を渡河する阪神なんば線淀川橋梁は河川内に多くの橋脚(39本)がある上、桁下高が計画高潮位を下回っているため、洪水の流れを阻害。河川整備計画で目標とする洪水の発生時には上流で堤防が決壊する恐れがある。
 現状は橋桁が堤防を約1・8メートル切り込む形となっており、高潮時には陸閘を閉鎖することで対応している状況だ。仮に陸閘の閉鎖が間に合わなかった場合、市街地に氾濫を引き起こす可能性がある。巨大地震発生時には鉄道と堤防の交差箇所が沈下し、越水による氾濫の危険もあるという。
 こうした課題を抜本的に解消するため、橋梁の架け替えに合わせて鉄道・道路の立体交差化を行う。事業区間は西淀川区大和田6丁目(右岸)から此花区伝法4丁目(左岸)に至る約2・4キロ。河川の流下能力を高めるため、現橋の西側に建設する新橋梁は桁下高を約7メートル高くし、橋脚数も39本から10本に減らす。
 橋梁の架け替えと伝法駅側(左岸)の高架化は河川事業となり、市街地への影響やコスト面などを考慮して別線方式で実施。右岸側の福駅周辺の高架化(延長約1キロ)は立体交差事業との共同区間となり、仮線方式で工事を行う。
 工事は5工区に分かれ、右岸側の福駅方面から順に1工区(延長約450メートル)を大成建設・戸田建設・熊谷組JV、2工区(550メートル)を奥村組・清水建設・森本組JV、3工区(約400メートル)を大林組・ハンシン建設・東洋建設JV、4工区(約500メートル)を鹿島・前田建設・西松建設JV、5工区(約450メートル)を鴻池組・錢高組・不動テトラJVが担当。
 起工式には国土交通省、大阪市、阪神電鉄の関係者や国会議員、施工業者ら約200人が出席した。冒頭、大塚高司国交副大臣が「本事業は大阪都市計画道路福町十三線立体交差事業との共同事業で、市街地の街並み再編も合わせて行う。地域の安全・安全が確保された暁には、より親しんでもらえる空間が誕生すると期待している」とあいさつした。大阪市の田中清剛副市長が「関係者と連携し、地域の皆さんのご理解を得ながら事業を進めていきたい」と吉村洋文市長のあいさつを代読。阪神電鉄の秦雅夫社長が「工事は長期間に及ぶが、関係機関のご指導、近隣の皆さんのご理解、ご協力をいただきながら無事故・無災害で工事を完成させたい」と話した。
 続いて関係者らによる鍬入れ・くす玉開披、安全宣言などが行われ、工事の無事完成を祈念した。

(日刊建設工業新聞様より引用)