JR東日本コンサル/ヘルメット装着型の音声ガイドシステム開発/現場見学に一役

 建設機械や工具を使う音が響き渡る工事現場の見学会で、案内役の声が聞き取りやすいと評判の商品が、ジェイアール東日本コンサルタンツが開発した音声ガイドシステム「メットフォンIII」。ヘルメットの裏側頂部に装着する小型・軽量のレシーバー(受信機)を通して参加者の耳に伝わる声は明瞭。無線式のためハンズフリーで両手が自由に使える。そのメリットに着目し、大学の実習や企業の研修などにも用途が広がり始めた。
 1月27日、大成建設が土木現場で働く若手技術者を集め、東京都内で施工中の「東京港臨港道路南北線10号地その2地区接続部及び沈埋函(7号函)製作・築造工事」の現場で行った技術勉強会。メットフォンIIIを組み込んだヘルメットを装着し、強風の中を歩く技術者から「よく聞こえる」というつぶやきが漏れた。大成建設東京支店は30台のメットフォンIIIを保有し、若手技術者向けの勉強会で活用している。小野哲典作業所長は使用後の感想を「付けていても重さを感じず、使い勝手がいい」と話す。
 ジェイアール東日本コンサルタンツがメットフォンの販売を始めたのは07年4月。開発に携わってきたICT事業本部の宮崎小百合企画ユニット課長は「初号機は受信機とは別にバッテリーが付いていて、現場から重いと苦情が出た。小型で軽量を目指した2号機は音質が悪かった」と振り返る。使い手側の要望に耳を傾けて改良を重ね、15年4月に販売を開始したのがメットフォンIIIだ。
 寸法は65ミリ×64ミリ×12ミリで重さ40グラム。リチウム充電池を搭載し、フル充電で7時間の使用が可能。ヘルメット裏側頂部のクッション材にマジックテープで装着するだけ。ヘルメットが音を反響させるスピーカーの役割を果たし、騒音下でも案内者の声が明瞭に聞こえる。販売価格は1セット(送信機1、受信機20)で40万円。従来の耳掛け式(イヤホン式)の60万~75万円と比べ安い。無線式のため、動き回ってもケーブルを引っ掛けたりする危険がない。イヤホンで耳をふさがないため、周囲の音も聞きやすい。
 発売から2年。現在は現場見学向けに大成建設以外にも鹿島、安藤ハザマ、東鉄工業、安部日鋼工業が活用中。最近は東鉄工業がレール保守作業、首都大学東京大学院の上野敦准教授が学生の測量実習に活用するなど用途が広がっている。
 ジェイアール東日本コンサルタンツは受信だけでなく、送信の機能を付加した商品も開発したが、こちらは有線式。耳掛け式より少し高価でも使いたいとの現場の声もあり、ハンズフリーの利点を生かした無線式の新商品の開発を急ぐ。

(日刊建設工業新聞様より引用)