JS/クリーンピア千曲(長野市)復旧工事が完了、19年台風19号で浸水被害

 ◇災害対応の知見が結実
 日本下水道事業団(JS、森岡泰裕理事長)が、2019年に発生した台風19号で浸水被害を受けた長野市の「長野県千曲川流域下水道下流処理区終末処理場(愛称・クリーンピア千曲)」の復旧工事を完了した。河川氾濫で既存設備の9割が稼働停止に陥り、最低限の機能を維持したまま復旧業務を推進。過去の災害対応で蓄積した知見が実を結び、JSは約2年の工期で運転再開を成し遂げた。
 クリーンピア千曲は長野県の4市町村(長野、須坂の2市、小布施町、高山村)を対象とする下水処理施設として1991年に供用を開始。処理能力は1日当たり8万立方メートルに上る。19年10月の台風19号で付近を流れる千曲川の堤防が決壊し、建屋の地下や1階が浸水。県から復旧業務を受託したJSが被災直後から対応に当たった。
 復旧作業は大きく分けて四つのタイムラインに沿って行った。まずは浸水した建屋の地下に滞留した河川の水を排水し、堆積した土砂を人力で取り除いた。下水や汚泥が要因となって発生する有毒な硫化水素で健康被害も懸念される。慎重な作業が求められた中、約4カ月を費やして汚泥の消毒などを終えた。
 水没によって既存の電気設備は9割が稼働停止に陥った。JSは災害対応の教訓を生かして仮設の受変電設備を活用したり、微生物処理を行うブロワを他から移設したりして原状回復に努めた。仮設備を駆使しながらの地道な作業が奏功し、滞りなく復旧工事を完了した。
 水害の教訓を生かし、JSは1階にあった電気室を2階に移設するなど重要な機能を担う設備の高所化も図った。復旧事業の費用は約146億円で、台風19号で被害を受けた下水処理施設の中でも最大規模という。
 25日に東京都内で行った工事の完了報告会には、中井宏東日本本部副本部長兼関東・北陸総合事務所長らが出席。限られた時間で復旧作業を進めるには「JS職員の連携プレーと先を読んだ最適な判断が重要」と総括した。前線で復旧業務に従事した辻田威夫長野復旧支援室長も、2年で復旧してほしいと依頼された長野県の「要請に応えられた」と胸をなで下ろした。

(日刊建設工業新聞様より引用)