国交省/一人親方の雇用維持や社員化後押し、改正業法基づき環境整備推進

 国土交通省は一人親方になるかどうかを技能者本人が慎重に判断できる材料を用意しつつ、建設会社による技能者の雇用維持や社員化を後押しする方向にかじを切る。改正建設業法に基づき、労務費に加えて法定福利費も適正額の確保・行き渡り策の対象とすることを検討。地方自治体などに工期の平準化を強く働き掛け、仕事量の繁閑を要因に技能者を雇用する会社が不利になる環境を変える。こうした方向性について建設業団体らと申し合わせた。=2面に関連記事
 産学官で構成する「建設キャリアアップシステム(CCUS)処遇改善推進協議会」の20日の会合で、2024、25年度に官民で取り組む内容として申し合わせた。規制逃れを目的とした「偽装一人親方」の抑制対策を中心に1月の「建設業の一人親方問題に関する検討会」で申し合わせ予定事項が了承されていたが、大幅に内容を拡充。一人親方と建設企業の取引環境の適正化により重点を置く。
 会合の冒頭、塩見英之不動産・建設経済局長は「『違法でなければ良い』とは必ずしもない。過度な重層下請構造を是正する。または処遇を良くして入職者を増やす。そうした観点で一人親方問題を考えるべきだ」と提起。1月時点では申し合わせ予定事項になかった▽一人親方化に伴う得失を踏まえた慎重判断の徹底▽事業者による雇用維持や社員化に必要な法定福利費の支払い徹底▽平準化の徹底-の三つを追加した。
 まずは技能者本人が一人親方と社員の働き方の違いやメリット・デメリットを理解できるような取り組みを建設業団体と共に進める。国交省が一人親方になる場合と社員のままでいる場合に分け、年金を含む収入にどの程度の違いが出るかを試算できるソフトなどの判断材料を用意する。
 改正業法で労務費ダンピングが禁止されることを踏まえ、法定福利費も見積もり・契約規制の対象とする方向。技能者を雇用する会社に法定福利費が行き渡るよう、適切な価格転嫁を促す。その際に法定福利費を内訳明示した見積書を周知する。技能者を雇用する会社が仕事量の繁閑を理由に稼働率が低下し負担増とならないよう工期の平準化も徹底する。
 偽装一人親方対策で「働き方自己診断チェックリスト」を普及。建設業団体には現状で約2割にとどまる現場活用率を約5割に高めてもらう。規制逃れの疑いがあれば元請から下請に雇用契約の締結を促し、改善がなければ現場入場を認めない措置を取ってもらう。

(日刊建設工業新聞様より引用)