国土変動-能登半島地震と測量界の未来・3/ドローンで安全・円滑に調査実施

 ◇画像判読など専門家の協力できる環境を
 全国の各地方整備局から能登半島地震の被災地支援で派遣されたテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の活動報告会では、ドローンによる事前調査の有効性を強調する意見が目立った。激震地の石川県を中心に、土砂崩落や路面の損壊が広がる被災地の現地調査は危険度が高く、移動が困難な場所でのドローンの有用性が改めて確認された。
 被災地の道路啓開や河道埋塞の応急復旧に当たった建設会社でもドローン測量を事前に行い、施工方針を検討する社が多く見られた。測量結果をデジタル技術と融合して被災状況を3Dモデルなどで見える化し、復旧計画の検討や作業の円滑化に生かす社もあった。
 能登半島地震の被災状況を分析し、被災インフラの復旧計画や今後の震災対策の検討を進める国の会議体などでも、被災地の各種調査や点検に有効なドローンの活用促進を求める意見が出ている。
 産官学のさまざまな機関・組織や企業が撮影・取得した画像や測量データは、被災地の状況把握や応急復旧に生かされてきた。金沢工業大学では発災後から各専門家が被災地の状況調査を実施。調査結果などの関連情報を大学のウェブサイトを通じて随時発信している。
 ネット上にあふれる多種多様な空間情報については、関係者に効率良く情報が届くよう、被災状況を確認できる公開データなどの取りまとめを行った。同大の中野一也教授は「近年の空間情報のオープンデータ化は非常に有益で意義のあるもの」とした上で、「今回の震災にかかわらず、災害の状況把握のための画像判読など専門知識のある人々が協力できる環境整備が必要だ」との認識を示す。
 専門知識を有効活用する事例として、「災害査定の概査などは遠隔からでも共通の基準で実施し、タスク管理できれば短時間で多くの人員が作業に関われる」と期待する。
 構造物の被災状況の調査で同大の田中泰司教授が能登半島内の長大橋を継続的に見て回り、調査結果などを随時発信している。甚大な被害を受け、通行止めが続く中能登農道橋(石川県七尾市、愛称=ツインブリッジのと)もその一つ。斜張橋と箱桁橋が連続し、能登島の西側と半島側をつなぐ長大橋は「耐震補強されていなかった部位で破壊が生じ、破壊されたと考えられる地面の中は調査自体が困難」と見る。
 修復が困難な箇所で破壊が散見され、早期復旧には「橋台の位置変更など、従来にない方法で柔軟に考える必要がある」と訴える。深刻な被害が生じたトンネルなどの事例を含め、構造物の耐震設計・補強の在り方をいま一度、議論する必要性も指摘している。

(km5002h_admin様より引用)