大林組/免震基礎コンクリの充てん率計測AIシステム開発/画像から空隙を自動判定

 大林組は、免震建物の基礎コンクリート工事で品質確保のために必要となる試験施工向けの新しいシステムを開発した。撮影した画像によるコンクリートの空隙(げき)判定を人工知能(AI)で代行し、充てん率を自動計測する。試験体1体で80枚の写真を検査する場合を想定してシステムの検証を行った結果、従来は1人で5~7日以上掛かっていた作業が2~3日で完了できることを確認した。
 システムは、AIを支える要素技術のディープラーニング(深層学習)を応用した。コンクリート面の空隙の特徴をコンピューターに学習させることで、所定寸法以上の空隙部分を自動検出して着色し、空隙面積の割合から充てん率を算出する。AIが検出した空隙の最長径や面積なども数値で表示できる。
 専門技術者が目視で行う従来の判定結果と比較した結果、新システムは空隙判定箇所の間違いの少なさを表す精度で84%、空隙の見落としの少なさを意味する再現率が約95%という結果が得られた。検出結果を最終的に人が確認して着色漏れを是正することにより、従来と同等の検査精度を確保できる。
 現在は、さまざまな現場で合否判定作業時の写真サンプルを取得し、空隙検出精度の向上に取り組んでいる段階という。今後、建設現場での検証を重ね、品質確保に十分な精度と再現率を確認した上で、検査業務の効率化に活用していく。
 免震装置は免震基礎コンクリートの上に設置したベースプレートと呼ばれる鋼板の上に取り付ける。プレートの下部に打設したコンクリートが密実に充てんされているかどうかは直接確認できない。
 このため、工事に先立ち実物大試験を実施する。プレートを取り除き下面のコンクリートの空隙を計測し、充てん率が基準を満たしていることを確認する。撮影写真は試験体当たり、25~100枚程度に上る。判定結果の算出に1週間以上掛かる場合もあり、検査の効率化が求められていた。
 目視検査を行う他の業務にもAIの適用範囲を拡大し、技術者不足や技術者の能力差による結果のばらつき、人的要因による見落としなどの解消を目指す。

(日刊建設工業新聞様より引用)