建設業の造り方改革-業界団体の取り組み・下/オール建設業で対応加速

 ◇持続可能な産業へ連携
 担い手の確保と時間外労働の罰則付き上限規制への対応を迫られ、多くの建設関係団体は、当事者としてこぞって対応に乗りだしている。
 全国建設業協会(全建)は、地域建設業の働き方の指針とする「働き方改革行動憲章」を21日に採択した。長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進、業務効率の引き上げや工程管理の工夫といった生産性向上を経営トップが主導し、長時間労働につながる企業文化の改革を促進することを明記。「週休2日制の普及」も盛り込んだ。
 全建の会員企業1万9070社の多くは、地域のインフラの整備・維持管理が事業の根幹。全国規模で事業展開するゼネコンに比べ、受注する工事の規模が小さく、「技術者が1人の現場もある。(大規模な現場と異なり)交代で休むのが難しい」(近藤晴貞会長)のが実情だ。それでも週休2日をうたったのは、担い手の確保と罰則付き上限規制に対応する「腹を固めた」(伊藤淳専務理事)ことにほかならない。
 行動憲章を決めた理事会に続いて開かれた協議員会で、近藤会長は傘下の都道府県建設業協会の首脳を前に、「他産業との人材獲得競争を勝ち抜き、地域社会に貢献する」ことを目的に「働き方改革の一層の推進に取り組む」と表明した。全建は経団連の長時間労働の是正に向けた共同宣言に賛同済み。10月から国土交通省と開く17年度地域懇談会・ブロック会議では週休2日を議題の一つに位置付ける。「働き方改革をきっちり考える」(近藤会長)。行動憲章を機に会員企業の取り組みを促す。
 全国中小建設業協会(全中建)は特別検討委員会を設置。週休2日の定着など長時間労働を是正する方策の検討に乗りだした。豊田剛会長は25日に国交省の幹部を訪ね、就労環境を改善するための支援を仰いだ。
 設備工事関連団体の取り組みも活発化している。日本電設工業協会(電設協)は、ゼネコン団体の日本建設業連合会(日建連)や全建に工程管理や工期設定に関する要望を行っており、10月をめどに「働き方改革専門委員会」を設置。具体的な施策の検討を始める。日本空調衛生工事業協会(日空衛)も17年度中に行動計画を策定する方針だ。
 躯体や仕上げなど現場の専門職種団体を束ねる建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は、週休2日の定着を目指す官民の発注者やゼネコン団体の取り組みを追い風に、専門工事業として「技能者を社員化し、月給制に移行する」との方針を22日の理事会で確認した。「安値受注を繰り返し、指し値をしてくる企業とは契約を行わない」。才賀会長は13年度の総会決議を再徹底する構えだ。
 時間外労働の罰則付き上限規制の適用に先行する建設関係団体の対応を、石井啓一国交相は26日の記者会見で「将来の担い手を確保する第一歩として歓迎したい」と評価した。日建連、全建など業界10団体が情報交換を始めるなど働き方改革に「オール建設業」で取り組む環境が整いつつある。政府は民間工事も対象にした「適正工期設定指針」を申し合わせ、産業ごとに受発注者が向き合う場も整備している。
 労働時間を減らし、担い手を呼び込み、持続可能な産業として発展する運動が勢いを増している。
 (編集部・「働き方改革」取材班)

(様より引用)