日建連・意見交換会を振り返る・下/若い人が憧れ、入ってくる業界に

 離職する若手技術者の半数が離職の理由に異動や転勤を挙げている--。日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は独自調査の結果を基に、建設業に根付く技術者の働き方について問題提起した。頻繁な転勤の一因となっているのが、入札での配置予定技術者の参加資格要件だ。若手の離職防止に向けて配置予定技術者に関する制度の見直しや、人材確保の取り組みなどを訴えた。
 「若者の目指すライフスタイルや仕事への考え方が大きく変化している」。日建連の佐々木嘉仁公共積算委員長は日建連の調査結果を踏まえ、そう指摘した。20~30歳の土木系技術者の離職率は2022年が6・7%と、17年から2・3ポイント上昇。離職理由(複数回答可)を見ると「転勤・異動」が50%と最も割合が高い=グラフ参照。
 土木工事は入札時、配置予定技術者の評価によって総合評価での獲得点が左右されやすく、監理技術者が固定化しやすい傾向にある。このため若手が実績を積みにくく、転勤する技術者が偏る一因となっている。日建連が発注者側に求めたのは監理技術者制度の運用緩和。転勤を完全になくすことは難しいが、技術者の専任要件を柔軟にすることで転勤頻度を減らし、若手の育成機会を増やす狙いだ。
 日建連側の要望に対し、国土交通省関東地方整備局は先行して対応していると回答。一定期間が過ぎると監理技術者を交代できる「監理技術者育成交代モデル工事」を試行しており、23年度は60件に適用した。四国整備局も主任技術者など専任で補助する技術者を配置できる取り組みを、本年度から全工事に適用している。
 若い担い手の確保に向けて、業界の魅力を発信する動きも広がっている。中国整備局は本年度、「インフラDXセンター」の本格運用を開始。同センターでは学生などにインフラ分野のDX技術を体験してもらう予定だ。日建連の清水琢三副会長土木本部副本部長は「見学できる現場を各整備局のサイトにまとめれば、学生の興味を引けるのでは」とも提案した。
 意見交換会を通じて、人材確保への危機感が受発注者間の共通認識であることを改めて確認した。押味至一副会長土木本部長は「若い人が憧れ、人がどんどん入ってくる業界にしたい」と訴える。魅力的な業界づくりには受発注者双方の努力が欠かせない。意見交換を踏まえたフォローアップを通じ、今後の成果に期待がかかる。
 =おわり(編集部・熊谷侑子)

(日刊建設工業新聞様より引用)