東大、海上保安庁/海底下の「ゆっくりすべり」検出/南海トラフ地震震源域で

 東京大学と海上保安庁は、南海トラフ地震震源域の海底下で「ゆっくりすべり」(プレート境界断層が数日から数年かけてゆっくり滑る現象)を検出した。地震に向けエネルギーをためている強固着域の浅部(沖合)の外側で発生していたと推定。地震の発生過程の理解や、発生リスクの評価を進める上で「重要な知見を提供すると期待される」(横田裕輔東大生産技術研究所海中観測実装工学研究センター講師)という。
 巨大地震の発生帯となるプレート境界では、ゆっくりすべりなど多様なスロー地震現象が発生しているが、海底下での観測は非常に困難だった。東大生産技術研と海上保安庁は、海溝型巨大地震震源域の海底の動きを測定する手法を共同開発し、定期的な観測を実施してきた。
 南海トラフに設置している15の観測点で得られたデータ(2006~18年)を解析した結果、海底の動きを示すデータの変化を7地点で検出。うち紀伊水道沖にある2地点で17~18年ごろに変化していた。これを基にプレート境界の滑り分布を推定した。
 これ以外の5地点では同時期に複数点で変化が現れていないため、プレート境界の滑りを確度高く推定できなかった。だが陸から離れた海底下で変化が検出できたことは「地震学上、重要な意義がある」(横田氏)という。
 両者は今後も南海トラフ地震の理解に向けた理論的、数値的な研究を進め、その成果を活用した将来のリスク評価や防災対策の高度化を図る。さらに海洋プラットフォーム工学の進展により、観測頻度や即時性を高度化していく考えだ。
 今回の研究成果は16日付の米科学雑誌『Science Advances』(電子版)に掲載される。

(日刊建設工業新聞様より引用)