ゼネコン大手/福島第1原発廃炉へ技術準備/遠隔操作ロボなど安全・効率化が課題

 ゼネコン大手が、東日本大震災で事故を起こした福島第1原発の廃炉に向けた技術の開発を急ピッチで進めている。第1原発の1~3号機は炉心溶融(メルトダウン)の影響で建屋内が汚染され、現在は除染やがれきの撤去が行われている。最大の難関は、高硬度で多様な物性の燃料デブリ(核燃料・炉心溶融体)の取り出しだ。地下にある燃料デブリを切削するボーリングロボットの開発など、高線量下で安全に効率よく作業するための対策に知恵を絞っている。
 福島県内では、除染の進ちょくとともに、除去土壌などを一定期間保管する中間貯蔵施設の整備が本格化しつつある一方、原発の廃炉に向けた直接的な作業はこれからだ。
 燃料デブリは、高硬度で高線量の金属やセラミックス混合物で、1~3号機合わせて800トンに上る。大成建設は、燃料デブリを取り出すため、米スリーマイル島原発事故の燃料除去で実績のあるボーリング工法を高度化した無人化切削技術として、遠隔から操作できるボーリングロボットを開発中だ。
 ドリルヘッド、自動装てん用ロッドホルダー、ロッドクランプなどで構成。ロッドの先に従来にない形状をした新設計のダイヤモンドビットを取り付けることで、模擬デブリ試験体による切削試験では、15分で5センチの切削ができたという。原子力本部原子力工事計画部の石原哲課長は「現在はロボットが完成した段階。実際の現場を想定した大きな試験体で実証を進めたい」としている。
 燃料デブリの取り出しの前に、水素爆発により建屋内に散乱したコンクリートがれきなどを撤去・回収する必要がある。清水建設は、クレーンにつるし、掃除機のようにがれきを吸引する装置と鋼管の切断や鉄骨の撤去に使うハンドリング装置を開発した。いずれも遠隔操縦できる。
 原子力・火力本部計画部の鳥居和敬副部長は「吸引装置は1度に最大20キロのがれきを吸い込める。カートリッジ式の回収バケットも搭載し、いっぱいになったらバケットを取り換える。効率的で安全だ」と強調する。
 鹿島は、東京電力、東京パワーテクノロジー(東京都江東区、原英雄社長)と汚染水対策として、配管やケーブルを収納している地下トンネル内を充てんするための長距離水中流動充てん材を開発した。材料となるセメントや混和材などの配合を工夫し、材料が分離せず品質を維持したまま水中100メートルにわたり充てんできる。2~4号機のタービン建屋とスクリーンポンプを結ぶトレンチに充てんした。
 土木営業本部の小沢明正次長は「充てんが必要な箇所はほかにも数十カ所ある」とし、この充てん材の採用を提案していく。放射線量の高い場所で作業する人が着用する遮へいベストに、腰部の負担を軽減できるパワーアシスト機能を搭載した新型ベストの導入も予定しているという。
 大林組は、高線量下で地質調査を行うための遠隔操作が可能なボーリングマシンを開発した。作業時間を大幅に短縮し、作業員の被ばくを低減できる。原子力本部原子力環境技術部の深谷正明部長は「廃炉に伴う廃棄物の7~8割はコンクリートとされる。いかにコンクリートを再利用するかが重要だ。除染工事で放射能対策技術を蓄積できた。これを既存の建設技術などと組み合わせていく」と廃炉技術の方向性を示す。

(日刊建設工業新聞様より引用)