下水道新技術機構/熊本地震での下水道BCPで調査報告書/アンケート結果集計

 ◇実情に即した計画求める
 日本下水道新技術機構(江藤隆理事長)は、「熊本地震における下水道BCPの有効性と課題に関する調査-熊本県編-」と題した報告書をまとめた。熊本県内の自治体にアンケートとヒアリングを実施し、地震発生直後の下水道BCP(事業継続計画)に基づく緊急対応などの実態を調査。その結果、点検箇所の絞り込みなどは一定の効果があったものの、その後段となる緊急点検については、上位計画や業務の優先順位、担当職員数などを踏まえた実情に即したBCPの策定を求める声が多く寄せられた。
 アンケートは県内の31自治体(回答率97%)を対象に7月8~27日に実施。▽下水道施設の被害状況・発生したトラブル▽下水道BCPに基づいた非常時行動の状況▽策定した下水道BCPで役立った点・見直しが必要な点▽下水道BCPを策定する上での他の自治体へのアドバイス-などを質問項目とした。
 アンケート結果によると、熊本地震の際に下水道BCPに基づいて「行動した」と回答したのは18自治体(60%)にとどまり、「行動しなかった」と答えたのは8自治体(27%)、対象地震動以下だったことなどから「該当しない」としたのは4自治体(13%)だった。
 行動できなかった理由としては、「下水道よりも上水道を優先した」「地域防災計画などの上位計画によって職員が避難所などに配置された」などが挙がり、上位計画との整合性や調整、業務の優先順位付けの必要性が浮き彫りになった。
 下水道BCPが役立った点については、「早急な対応・連絡ができた」「重要な幹線の位置や被害の大きなエリアがすぐに把握できた」など一定の評価が示された。
 一方で、見直しが必要な点としては「他の優先業務を踏まえた対応可能な指揮命令系統の構築が必要」と指摘する声や、下水道担当職員が少ない自治体からは「災害調査の時間がかかりすぎた」「下水道BCP業務と人員配置が実情に即していなかった」などの課題が挙げられた。
 このほか、下水道施設の被害が比較的大きかった12自治体を対象に、同機構の調査員が8月2~5日に現地を訪問してヒアリングを実施。主に▽アンケート結果の追加確認▽ヒアリングシートの内容確認▽下水道BCPの詳細内容の確認-などを行った。その結果、「緊急点検から災害査定までの一連の流れを整理したマニュアルもしくは参考資料が欲しい」「各種協定の必要性を感じているが、自治体として既に締結している協定を十分に把握していない。有効と思われる協定がまだ整理できていない」などの意見が寄せられた。

(日刊建設工業新聞様より引用)