静岡県/地盤沈下調査に人工衛星画像解析を本格導入/水準測量との誤差わずか

 静岡県は本年度から、地盤沈下調査に人工衛星画像解析を本格導入する。他の都道府県に先駆け、2020年度に県西部地域で人工衛星画像解析を試験的に行った結果、従来の水準測量との誤差はわずかで、地盤沈下のデータ把握に必要な精度を十分確保できることを確認した。これを受け、本年度に実施する県中部地域の調査から導入する。従来は3~8年に1回だった調査周期は3年に1回に短縮し、異常を早期に把握する方針。
 県は地下水の保全と持続的な利用を図るため、地下水活用が活発で地盤に粘土層を有する6地域(沼津三島、岳南、静清、大井川、中遠、西遠)を対象に、1979年度以降、3~8年ごとに水準測量による地盤沈下調査を実施してきた。
 しかし、近年は異常気象など環境が激変。地下水の異常に早期に対応するためには地盤変動を広域的、速やかに把握する必要があるため、昨年度に県西部地域(調査面積約760平方キロ)を対象に人工衛生の画像データを利用した「面的評価方法」で地盤沈下の状況を把握した。
 面的評価方法は、異なる時期で衛星から地表に向けて照射された電波データの差から、電波のずれを算出して解析し、面的な地盤の変位量分布図を作成する。並行して実施した水準測量の実測値と人工衛星画像解析の結果を比較し、精度を検証した。その結果、差は平均約0・4ミリ(最大0・9ミリ)で、環境省が作成した地盤沈下観測等における衛星活用マニュアルで定める基準を十分に満たす結果となった。
 従来手法では、地盤変動量は水準点周辺の限定的観測(6地域で199平方キロ)だったが、人工衛星画像解析では広範囲で面的な把握(6地域周辺で1380平方キロ)が可能になる。水準測量は今後も併せて実施するが、調査面積当たりのコストは大幅に下がる。調査期間のサイクルを短縮することで、地盤沈下などの異常を早期に把握できるなどのメリットがある。

(日刊建設工業新聞様より引用)