国交省/出水期を有効活用、統一ルール運用開始/円滑施工や平準化に期待

 国土交通省は、直轄河川工事で、川が増水しやすい出水期にも施工できる工種に関する全国統一ルールの運用を本年度に開始した。緊急時の退避計画などを事前に策定した上で、河道掘削など安全上問題がない作業の実施を認める。出水期を有効活用することで施工時期の平準化を図り、働き方改革などにつなげるのが狙い。今後、さらなる緩和も検討する方針だ。=5面に関連記事
 出水期は梅雨時の集中豪雨や台風などで洪水が起きやすい時期を指す。例えば関東地方整備局では6月1日から10月31日までを出水期とし、原則として出水期には河川工事を行わないことにしている。
 国交省は、直轄河川での出水期の工事施工の取り扱いに関する通知を3月22日に各地方整備局などに出した。施工可能な工種として、▽河道掘削・しゅんせつ工▽天端舗装工▽工事用道路工、管理用道路工▽土砂運搬工▽根固め(乱積み)工-を列挙。工事の準備・後片付けも認めている。今後、矢板護岸などの工種を加える案も検討している。
 これらの工種の作業は、従来も河川の特性などを踏まえて行われるケースがあったが、統一的なルールを整理したのは初めて。5月24日には、橋梁工事など河川への占用許可工事についても、同様の扱いとすることを通知した。
 出水期施工を認める場合には、施工可能な工種を特記仕様書に記載する。受注者には、作業員や仮設物・資機材などの退避方法や流出防止対策、降雨や河川水位などに関する情報収集・伝達方法などを施工計画書に記載することを求める。作業が増えた場合などは適切に設計変更を行っていくとしている。
 統一ルールは、15年9月の関東・東北豪雨による水害を教訓に関東整備局が茨城県内で進めている「鬼怒川緊急対策プロジェクト」などで既に適用されている。安全性が担保できる範囲で出水期に可能な作業が増えていけば、施工時期の平準化が進んで非出水期の工程に余裕が生まれやすくなり、より適切な工期の確保につながる。週休2日制の実現など働き方改革の後押しにもなるほか、流域住民にとっては治水施設の早期完成というメリットも期待できる。
 今後、堤防機能を低下させることなく施工可能な工種を検討し、さらなる緩和を図る方針で、矢板護岸、遮水矢板、川裏側の地盤改良などが検討対象に挙がっている。18年度から適用可能な工種を詰めた上で、改めて通知する。
 国交省は「安全最優先は変えずに、出水期にできる工種とできない工種を明確化し、生産性の向上を図りたい」(水管理・国土保全局)としている。

(日刊建設工業新聞様より引用)