竹中工務店、吉野石膏/放射線遮へいブロックを開発/簡易施工で大幅工期短縮

 竹中工務店と吉野石膏(東京都千代田区、須藤永作社長)は11日、ガンマ線やエックス線に対して優れた遮へい性能を発揮する放射線遮へいブロック壁を共同開発したと発表した。石こうに、硫酸バリウムを添加することで比重が高まり、一般的に遮へいに使われる普通コンクリートと比べて遮へい性能が向上。粒子が細かく、形状の自由度が高いため、目地処理を必要としない簡易な施工方法で工期を大幅に短縮できる。
 竹中工務店が福島県大熊町で施工していた福島第1原子力発電所新事務本館新築工事のエントランスホール守衛室受付部に設置され、3日に供用を開始した。
 従来、ガンマ線やエックス線などの放射線の遮へいでは、鉛板や鉄板などと併用して普通コンクリートが主に利用されている。この場合、現場でのコンクリート打設やモルタル目地処理が必要なため、施工中に発生する騒音や粉じん、汚れなどの発生を完全に抑えることができない。
 プレキャスト部材を活用した乾式施工とする場合は、十分な遮へい性能を確保するために、部材を構成する材料の比重の均一化や、寸法精度の向上を図ることが課題だった。
 今回開発した「RadBlock-X」は、石こうを主成分に硫酸バリウムを添加した新素材で構成する。比重の高い硫酸バリウムを加えることで、素材全体の比重が向上。高密度なため、必要とされる遮へい性能に応じて、普通コンクリートより部材を薄く設計することも可能で、建築基準法で定める震度6強の地震にも耐える耐震性を持つ。
 素材の粒子は数十マイクロメートルと、普通コンクリート(20ミリ程度)より細かいため、形状自由度も向上。ブロック製造時の製作寸法誤差は0・25%未満の精度を確保することから、施工はブロックの上下左右端部を凹凸形状にして積み上げるだけ。目地処理を必要としないため、従来の5分の1の工期で施工できる。
 素材の密度と寸法精度が高いため、ガンマ線に対する遮へい性能は普通コンクリートの約1・2倍を確保。その上、鉛などの有害重金属を使用しないため、環境にも優しい。
 同社は今後、原子力関連施設をはじめ、医療・研究施設など放射線遮へいが要求されるさまざまな施設に適用する方針で、特に、陽電子放射断層撮影装置(PET)やコンピューター断層撮影装置(CT)、がんの最先端放射線治療など、工期や計画上の制約が多い医療施設の新築・リニューアルに積極的に提案していく考えだ。

(日刊建設工業新聞様より引用)