鉄道各社の展望-開業150年-/都営線/駅周辺のまちづくりと連携

 東京都は地下鉄4路線のほか路面電車の東京さくらトラム(都電荒川線)、自動運転システムを導入した日暮里・舎人ライナーなどを運営している。都市活動を下支えするだけでなく、駅周辺のまちづくりとの連携や市街地再開発事業への参画を通して東京の成長と成熟を促進。足元は厳しい経営が続くが、先進技術の導入などで安定したサービスを提供し、公営交通事業者としての使命を果たす。
 都営地下鉄は浅草線、三田線、新宿線、大江戸線の四つ。都は浅草線泉岳寺駅(港区)の大規模改修とともに、新たなビルを建設する「泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業」を推進。地上部にある約8490平方メートルの敷地に、RC一部SRC・S造地下3階地上30階建て塔屋2階延べ約11万1200平方メートル、最高高さ約145メートル規模の複合ビルを建てる。
 同駅周辺は国際交流拠点の創出に向け、複数の再開発プロジェクトが進んでいる。空港と都心を結ぶ重要な交通結節点となる駅で利用者の増加も見込まれる。近くにあるJR高輪ゲートウェイ駅との回遊性を高めるため、歩行者デッキなどを整備。周辺まちづくりと一体の大型再開発に取り組み、駅利用者の利便性を向上する。文化財の発掘調査が続いているため、着工時期は未定となっている。
 JRと東京モノレールの浜松町駅(港区)周辺でも組合施行の「浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業」が進行中で、事業区域内に都交通局の大門庁舎が含まれている。都は同事業に参画し、再開発後の新たなビルに庁舎機能を移転する。約1300平方メートルの賃貸用の床も取得して賃料収入などを得る計画だ。今後も「所有する不動産を有効活用し、長期的に安定した収入を確保するとともに、周辺のまちづくりにも貢献していく」(都担当者)考えだ。
 安全で安定的な運行を支えるため、5Gなど新たなデジタル技術を活用し生産性を高める。2022年10月に大江戸線都庁前駅(新宿区)でローカル5Gネットワークを試行用に整備した。地下鉄構造物や線路などの保守・点検作業への利用を視野に検証している。
 鉄道の延伸は住民の利便性向上や地域の活性化につながる重要な施策だ。大江戸線を大泉学園(練馬区)方面へ延伸する計画に対し、地域の期待度も高い。だが足元の乗客数はコロナ禍前の水準に戻っていない。建設資材やエネルギーの価格高騰も加わり、今後も予断を許さないが、小池百合子都知事は都議会定例会で、今後検討組織の設置を表明。武市敬副知事をトップに据え、練馬区と連携強化し、課題解決などを協議する。
 需要をどう創出し、収益性もどのように高めていくかが喫緊の課題だ。公共交通機関としてまずは安全確保を徹底しながら、支出の削減・抑制を推進。デジタル技術の活用などによって業務の効率化も図る。その上で、旅客誘致の強化や利便性の高い構内店舗の導入などを展開し収益力を底上げしていく。「まちづくりとの連携や環境負荷の低減といった東京の発展に向けた取り組みも進める」(都担当者)。

(km5002h_admin様より引用)