鹿島/入院患者の睡眠環境最適化技術構築/医療施設新築・改修で積極提案

 鹿島は17日、病院の多床室(相部屋)に入院する患者の睡眠環境を向上させる技術を構築したと発表した。睡眠に大きな影響を与える「温熱」「音」「光」の各環境を最適化する装置や設備などを開発。新たな病院の建設や既存病室の改修などで採用を提案していく。導入コストの低減や工期短縮に向け、各技術をパッケージにした製品化をメーカーと共同で検討中という。
 今回の技術の構築に当たり、尾崎章子東北大大学院医学系研究科教授と共同で、相部屋の環境特性と個々の患者の睡眠状態の実態調査を実施。温熱、音、光の3要素が患者の睡眠に大きな影響を与えることを明らかにした。これを踏まえ、東京睡眠医学センター長で慶応大病院講師の遠藤拓郎医師の監修で被験者実験を行い、物理面に加え、人の生理面や心理面からより良い睡眠が得られる環境を構築する技術を確立した。
 病院は住宅に比べ空調設備が整い、比較的良好な温熱環境とされるが、患者が自分の好みで空調を調節したいという声が多くある。そこで、天井近くの空気をベッド上に送風する「室内送風装置」を開発した。ベッドごとに送風のオン・オフが可能で、風向も調節できる。
 就寝時に病室が静まると、他の人の会話など周辺で生じる音で寝付きが悪くなる傾向がある。その対策として、低音から高音まで幅広い周波数を持つブラウンノイズを適度な音量で発生させるシステム「ブラウンノイズスピーカー」も開発した。ベッド中央に設置することで、雑騒音を緩和することが可能という。
 このほか、窓の上部から光を天井面へ反射させる「ライトシェルフ」、ベッドサイドに設置するパーテーションと一体型の「模擬窓照明」も開発した。病室全体に昼光を採り入れたり、足りない照度を補ったりすることができる。
 初弾として、あけぼの病院(東京都町田市)の新病院棟の病室に室内送風装置とライトシェルフを導入し、患者から高い評価を得ているという。
 入院患者の中には、生活環境の変化により不眠を訴える人も少なくない。良質な睡眠が生体リズムを安定させ、より良い療養生活を送ることができるようになる。これによりナースコールも減少。医療スタッフの業務負荷の軽減にもつながる。

(日刊建設工業新聞様より引用)