民泊の実態調査を開始

11月中に取りまとめ


厚労省は9月29日、住宅に観光客などを宿泊させる民泊の実態を把握するため、全国142自治体を通じて調査に乗り出すことを明らかにした。
旅館業の許可を得ずに民泊を行う違法な運営者が急増している問題を受け、現状の把握を図る。
11月中に調査結果をまとめ、違法な運営が発覚した場合には、法的措置を行う可能性もあるとしている。

厚労省が民泊物件の調査を行うのは今回が初。
民泊仲介サイトに掲載されている物件から自治体ごとに約100件を抽出し、物件の種類や所在地、運営者や料金をまとめる。
調査の対象となる地域は全国の都道府県や政令指定都市のうち、保健所が設置されている142自治体。

調査はアウトソーシング事業を行うエルグッドヒューマー(埼玉県志木市)が行う。
物件は民泊仲介サイト大手の『Airbnb』や『自在客(ジザイケ)』など複数のサイトから抽出する予定だが、どのサイトから調査するかは未定だ。

厚労省が9月7日に調査会社の募集を行い、入札があった企業の中から調査にかかる費用などをもとにエルグッドヒューマーを選定した。
同社は今年7月に設立したばかりで、企業のキャンペーン、資料請求事務の代行やアンケートの発送・集計・分析などを主な事業としている。

厚労省は現在エルグッドヒューマーと契約作業を進めており、締結後すぐに調査を開始させる。
11月中には調査を終え、民泊の実態を把握するとともに違法民泊への対応策の構築に役立てる。

厚労省は「民泊新法の制定に向けた動きもあるが、旅館業法を得ずに民泊を運営することが現行法に触れるのは間違いない。まずは実態を正確に把握し、対応を検討する」とした。
なお、調査によって違法な民泊運営が発覚した場合、「調査の精度がわからないため、即時に法的措置を行うとは限らない」とした上で、違法性が明らかな運営者は取り締まる可能性もあるとした。

無法状態解決の糸口に

取り締まりではなく状況把握が目的


民泊の実態調査は仲介サイトに掲載されている物件情報をもとに行われるが、仲介サイトの運営者へ協力要請は行っていない。
違法な民泊の運営者がサイト上で偽名を使用して募集を行っている場合には、サイト事業者の協力なしで運営者個人の特定は難しい。

観光庁などによると、民泊仲介サイトは国外の企業が運営するものを含め10以上あり、民泊の運営者が物件を掲載する際に求められる個人情報はサイトによって異なる。

本誌が8月に仲介サイト大手の『Airbnb』に掲載する物件約3300件を対象に違法民泊の実態調査を行った際には、運営者の半数以上が偽名を使用するほか、住所や物件名を明らかにしておらず、違法とみられる運営者を特定することはできなかった。

民泊に関するトラブルや相談を受け付ける保健所からは「近隣住民から通報があっても、仲介サイトに掲載している情報だけで運営者個人を特定することは難しく、違法かを判別するには時間がかかる」といった声もあり、今回の調査で違法民泊の実態をどこまでつかめるかに疑問が残る。

厚労省は今回の調査を「取り締まりのためのものではない」としており、違法民泊の実態を暴く足がかりとする考えを示した。

(全国賃貸住宅新聞様より引用)